マリの子育て奮闘記
●アローカナのマリちゃん初めてのママ体験●
令和4年の9月の中頃、今まで快調に卵を産み続けてきたマリがピタリと産むことを止めてしまいました。
ひたむきに巣の周りをうろうろしたみたり、やたらと穴を掘ってみたりと落ち着きが無くなりました。
やがて、カナちゃんと共用している産卵場所にでんと居座ると全くそこから動かなくなってしまいました。
カナちゃんが卵を産みたいからそこをどいてくれ!って追い出そうとしても梃子でも動かぬ状態です。
これにはさすがの女王カナちゃんも諦める他なく、不満たらたらな様子でマリが居て狭くなった産卵場所で卵を産むしかありませんでした。
そしてそんなカナちゃんが産み落とした卵をしれっとマリは自分の懐にしまい込んでしまいました。
次の日も、マリは産卵場所から全く動かずにカナちゃんが産んだ卵をまたしれっと盗んでは懐に隠してました。
おお、これはこれは、まあまあ、抱卵期に入りましたね。
抱卵期とは鶏が21日間卵を温めて孵化させるまでの期間を言います。
雌鶏は一定数卵を産み数が溜まるとこうやって卵を抱いて孵化させるのです。
しかし、今マリが抱いているのはカナちゃんが産んだ卵です。
カナちゃんは頑なにアローカナの雄鶏『双靖-そうせい-』との交尾を拒み続けるものだから未だに有精卵は産んでません。
従っていくらマリが死力を尽くして温めても絶対に雛が孵る訳が無いのです。
卵をさっさと回収して早々にマリにママさん活動を諦めて貰おうかととも考えたのですが、マリにとってはこれが初めての抱卵期。
で、大抵初めてというのは失敗する事が多いです。ですので、スタッフは「ちっとばかし、やらせてみようかなぁ」と思ってしまいました。
この時スタッフとしては
絶対に100%失敗する‼っていうなぞの確信があったので、やれるもんならやってみなよの体でいたのです。
(これが見事にマリによって覆されるのですが…。)
丁度、この頃は烏骨鶏のプリンちゃんが産卵絶好調でした。毎日夫のおもちとイチャイチャしてはぷりぷり産んで、それはそれは
毎日見事な有精卵を産み落としていました。更に、初生みの時期を終えたユキちゃんも大ぶりな良い卵を産むようになったこともあり
安定的に烏骨鶏の有精卵を手に入れることが出来ていました。
と言うわけで、スタッフはプリンが産んだ卵2個とユキが産んだ卵1個合計3個を、マリが温めている無精卵と交換しました。
これは異なる種の鳥の卵を鶏に孵化させて育雛してもらうこと、いわゆる『仮母-かぼ-』という孵化方法のひとつで養鶏場の方や
ブリーダーの方々がよく行っている方法の一つです。
一般的には子育てがうまいといわれる矮鶏や烏骨鶏に仮母をさせる場合が多いのですが、果たしてアローカナのマリは出来るのかと、
気になったりもしたのですが、何事もなかったかのようにプリン達の卵をマリは懐に抱きこんだのでこれはもう彼女にお任せする事にしました。
マリ頑張ってね。(期待していない)
一方、マリがママさん活動を始めたことを理解したのかしていないのか謎のままの夫、双靖はそれなりにマリを気遣うような素振りを
見せるものの、マリからは盛大に邪魔者扱いを受けてしまい、少し寂しい立場になってしまいました。
愛しのマリに構ってもらえずに拗ねる双靖…。「ほぉ~う」と寂しげに鳴いてスタッフに妻をどうにかしてくれと訴えてきました。
そりぁ、卵を抱いているのに交尾しようとして体にのしかかってきたり、せっかく快適な状態に藁の位置を修正したのに全部ほじくって台無しにしたり、こちとら卵温めて満足にご飯も食べてないのにその傍らで菜っ葉啄んだり、これ見よがしに周りを走り回っていたら百年の恋も一気に氷点下まで冷めますわ。ウザがられて当然ですよ。
●そして運命の21日後●
抱卵期間が経過するにつれて、マリの様子に変化が見られるようになりました。
スタッフが様子を見る度に
「きぃぃぃぃぃぃ!」と物凄い剣幕で怒るのです。
更に卵の検卵をしようとして彼女の懐に手を突っ込むと
「ぎゃわわわわわわぐぁ‼!」と怒りながら容赦なく突くようになりました。
これらの行動は当然、子供を敵から守るための威嚇行動ですので、まったく問題無いのですが今までとても穏やかで親しみやすかったマリが此処まで人格(鶏格?)が変わってしまうとスタッフちょっと凹みます。
せめて、餌くらい近くに置かせてよと皿を彼女に近づけただけで
「ぎょわあああああん‼」です。
しまいには好物の玄米を咀嚼しながらぶち切れをかましてました。
口から玄米を取りこぼしながら
「あ”わ”わわわわわわw‼」と怒り狂う姿は返って面白かったです。
因みに双靖はただうろうろしているだけで相変わらず役に立っていませんでした。
社長が「双、お前もなんかやれよ!」呆れていましたが、スタッフはこっそり似たものどぅ・・・いえ、何でもないです。
そして21日が過ぎました。
おや、マリのお腹の中からぴぃぴぃ声が聞こえてきましたよ🎶
スタッフの『失敗するだろうなぁ』というネガティブな期待を見事に裏切りマリは3個全ての卵を孵しました。
これにはスタッフも驚きました。思わずマリを抱きしめてみると少し痩せており、改めてママになるという事は偉大なり。
と痛感しました。因みに子育てママは大変気が立っていますから、この後スタッフはマリにぼっこぼこに突かれます。
孵って間もないヒヨコは寒さに非常に弱いので、すっぽりとマリのお腹の中に収まっておりなかなか出てこようとはしないのですがお腹の中から元気な鳴き声が良く聞こえてきます。一気に子育て現場は騒がしくなりましたが、マリは冷静に根気強くヒヨコを温めていました。
ふむふむ。どうやら育児放棄もなさそうだし、ひとまず安心です。
さて、ヒヨコが無事に孵り忙しくなるマリママ。
これにはさすがの双靖も、
全く役に立っていませんでした。
た~だマリの周りをうろうろ。構ってほしくてずっとうろうろ。
いや、お前がひよこになってどうすんの、と思うマリとスタッフでした。
今回無事に無まれた烏骨鶏のヒヨコ3羽。
ふっくらもちもちですっごくかわいい‼
やっぱり、同じ鶏のヒヨコでも矮鶏とは少し印象が違うんだよなぁ・・・。
でも、スタッフは素人なのでこの時点ではまだ雌雄の判別が出来ません。
元気に育つことを祈る‼
●教育熱心なママさんぶりを発揮●
ヒヨコはあっという間に成長するので、ママはのんびりしていられません。
ヒヨコの羽が完全に乾ききり、ちょこちょこ自分の力で歩き出せるようになるとマリママはひよこ達を懐から出し水の飲み方・餌の食べ方やどれが食べ物かをひよこ達に教えていきます。
彼女はひよこ達の前で実際に自分が食べたり飲んだりして、『食べる事』を学習させているようでした。
やがてマリの様子を真剣に見ていたひよこ達も彼女に続いて一生懸命くちばしを動かしながら餌を啄み始めました。
水も初めて口に含んだ時は初めての感触で驚きひっくり返っていた子もいましたが、しばらくして皆上手に飲めるようになりました。
今日は初めての屋外実習です。マリママ、中々のスパルタ教育ですね。
(いえいえ、恐らく自分が外に出てリフレッシュしたかったのでしょうけど…。彼女かな~りストレス溜まっているので…。双靖のせいで…。)
始めは、怖がって震えていたひよこ達。やがて自ら地面を掘ってみたり、草を啄んだりと各々遊び始めたようです。
でも、やっぱりまだヒヨコですから体が冷えてくるとマリの懐に入り暖を取ります。マリも定期的にひよこ達を呼び寄せて積極的に温めている様でした。きちんと子供たちを見守っていますね。スタッフの親とは大違い…。(泣)
マリママのご指導を兄弟並んで真剣に聞いている様子。
社長がこういった写真を撮るのが凄い上手でとても羨ましい。
スタッフが撮影するとどうもあまり写りが良くないものばかりが撮れてしまう。センスの問題だろうか。
●親離れと子離れ●
雛たちが生まれておよそ2ヵ月が経ちました。3羽の雛たちは病気やけがもなくすくすく順調に育ち、生みの親であるプリンの一回り小さいサイズぐらいまでになりました。それでもまだ、鳴き声は「ぴよぴよ」です。「こっこ」になるのはまだ先の様ですね。
そんな折、あんなに雛に近づくと盛大にキレ散らかしていたマリがあまり騒がなくなってきました。
雛たちからも少し距離をとり始めたようです。一方雛たちはまだまだ、マリママに甘えたい様でマリが視界から居なくなると
すかさず呼び鳴きをしてマリを呼び出しています。
最初の内は雛が呼べは遠くからでも飛んで駆けつけていたマリですが、ここ最近は積極的には向かう事がなくなりました。
「自分の事は自分でやりなさい。そろそろ自立する時が来たのよ。」
と、雛たちに目で訴えているようにみえます。雛が「ご飯をちょうだいよ。」とおねだりしても
「貴方にはもう立派な嘴と脚があるでしょう。ご飯の捕り方は何度も何度も教えたはずよ。」
とでも言うように雛たちに構う事は一切しません。
これには、流石の雛たちも諦めるほかなくおねだりを止めて兄弟で協力しながら餌探しを始めました。
それを、遠くで見つめるマリ。なんだか満足した顔。ホッとした顔。不思議な表情をしていました。
●自立、それぞれの生き方を模索●
生後100日が経過しました。育ての親であるマリと袂を分かった烏骨鶏のおチビちゃん達はそれぞれ性格が現れはじめてきました。
一番上の子は人によく懐く様になり、餌も手から食べることが出来ます。
勿論なでなでも抱っこも嫌がりませんし何ならスタッフの後をついてきます。
しかし、少々勝気な性格で気分を害した時は容赦なくスタッフの脚を突いてきます。
おやおや、こんなところ子育て中のマリに似なくてよいのに…。
二番目の子は全く逆で一向に懐きませんでした。とにかく人を怖がりスタッフが来ると逃げ回ります。
中々鶏舎に戻ってくれないので兄弟の中で一番苦労します。抱っこはすると唸り声を発して盛大に嫌がります。
突いてくることは無いのですが、とても臆病な性格の様です。兄弟と居るときはそこまでびくびくしていないのですが。
どうやらもう少し、人慣れさせる訓練が必要なようです。
三番目の子は一番小さい体で、一番大人しい控えめな子になりました。人はまだ少し怖いようで抱っこもまだまだ慣れない様です。
でも二番目ほど嫌がらないので根気よく接していけばやがて慣れていくでしょう。
●まさかまさかの三姉妹だった●
さて、ついにおチビちゃん達は生後180日が経過しました。この頃にはもうかつてのようにぴよぴよ鳴きは卒業です。
成鶏らしく「こー」とか「くくく」と鳴くようになります。そして雄鶏であった場合は丁度このぐらいのタイミングで雄叫びをあげるようになりますし、雄のシンボルである鶏冠がとても大きく発達してくるのですが、この子達全く鶏冠の発達はしませんでしたし、雄叫びも一つも上げたりはしませんでした。
と、いうことはこのおチビちゃん達、全員雌鶏だったようです。
これは嬉しい誤算でした。
絶対雄雌混じるものだと思っていたので、その場合寂しいですがペアをつくって新しい飼い主さんを探して手放す予定でした。
どうしても縄張り意識が強い雄鶏を沢山飼育する訳にはいかないのです。
増えすぎてしまうと、喧嘩が絶えなくなりケガをする鶏や絶え間なく交尾を強要される雌鶏達の負担になります。
おチビちゃん達が三姉妹であることが判明したので、今回はそのまま弊社に社員として残ってもらうことになりました!
もう少し経てば美味しい卵を産み始めるでしょう。
そして、ここで一つ懸念材料が…。
これで桜技研の烏骨鶏たち合計8羽になったわけです。
つまり…
鶏舎が狭い!!
ということで
社長、決断しましたよ!
社長『よし、鶏舎の増設Vol.2だ!!!!』
社員『……うわぁ。(´;ω;`)』
来ました出ました地獄の始まり再びです。
ですが、可愛い可愛い社員の為に頑張りますよ!
気になる柑橘三姉妹の今後も定期的にアップ出来ればと思います。
(スタッフが生きていたらですが・・・・・。)